成田国際空港旅客ターミナル動物検疫の状況視察
世界的にアフリカ豚コレラの感染地域が拡大しつつあり、中国での発生が確認拡大の状況にあることから、日本への侵入が危惧される状況から、県農林水産部畜産課の紹介で成田国際空港旅客ターミナルにおける疾病侵入防止のための仕事及び状況について、平成30年9月12日(水)ナイスポーク役員・事務局9名と(公社)千葉県畜産協会松木専務計10名で農林水産省動物検疫所成田支所を視察。
午後1時30分に指定場所に集合し、現場視察前に会議室において動物検疫について話を聞いた。 国内にある動物検疫施設は本所横浜1ヵ所、8ヶ所の支所、16の出張所と4分室あり、家畜防疫官の数は460名と説明。意外と少ない数字に驚いた。
農林水産省動物検疫所成田支所 田中 寿一 支所長
仕事は大きく分けて、生体動物(牛・馬・鶏等の)の輸入検査。当然悪性伝染病発生地域からの輸入は禁止されている。もう一つは畜産物(肉・ソーセージ等)の輸入検査。
これも当然口蹄疫などの伝染病発生地域からの輸入は禁止されている。発生のない地域からの輸
入は輸入指定港が決められ厳しい輸入検査に合格したもののみ輸入が認められる。
1.中国におけるアフリカ豚コレラ(ASF)発生 |
アフリカ豚コレラの病状は、多岐に渡り、甚急性、急性、亜急性、慢性の症状を示す。
甚急性では、突然死亡、急性では発熱(40~42℃)、食欲不振、粘血便、チアノーゼ等を呈し、死亡率は100%に近い。 ≪防疫対策は摘発淘汰のみ≫
2.アフリカ豚コレラの疫学 |
★アフリカの風土病(イボイノシシとダニでFウイルス保持)
★アフリカに白人が入植、養豚を試みるがASFの発生で失敗.
★1921年 ケニアでASFの発生を確認
★アフリカ大陸以外での発生は過去3回
1957 年 アンゴラから欧州に侵入
1,998 年 アフリカ東部からマダカスカルに侵入
2007 年 アフリカ東部から黒海沿岸に侵入
≪ASFに汚染された残飯が原因≫
3.アフリカ豚コレラの発生状況 |
日本での発生はない。
2007年にジョージアで発生。以降東欧で増加・拡大
エストニア・ラトビア・リトアニア・ポーランド・チェコ・ロシア・ベラルーシ・ウクライナ
モルドバ・ルーマニア・ハンガリー ≪2018.4.23現在OIE≫
4.ASFウイルスの生残性 |
★ 温度:低温では感染性は長時間維持される。
★ 熱不活化:56℃、70分以上/ 60℃、30分
★ PH:PH3.0以下又は11.5以上で不活化
血清入りではPH13以上で数日間感染性残存
★有機溶媒:エーテル・クロロホルム感受性
★消毒薬:水酸化ナトリュウム・炭酸ナトリュウム・次亜塩素酸ソーダ―・界面活性剤・
ヨウ素化合物・
★血液・糞便、組織では長期間感染性を維持
豚肉・加熱不十分なハム・ソーセージ、
ギャベージ(厨房残渣)等が疾病の
伝播源として問題 飛び火発生
5.ウイルスの生存期間(口蹄疫との比較) |
|
アフリカ豚コレラ |
口蹄疫(参考) |
糞便(堆肥) |
11日以上 |
1週(夏)・24週(冬) |
冷蔵肉 |
15 週 |
1日(1~7℃) |
凍結肉 |
15 年 |
〉55日 |
非加熱熟成生ハム等 |
6~10ヶ月 ※ |
7~190日 |
※持ち込みルートの例 ★航空機・船舶のギャベージ
★季節労働者や不法移民が持ち込んだ豚肉製品
6.中国におけるアフリカ豚コレラ発生に対する検疫強化 |
★ アフリカ豚コレラの発生省等からの直行便に対して、検疫探知犬による探知活動又は家畜防疫官による口頭質問を強化(成田空港約7割実施) 入国者への検査強化
★ 中国におけるアフリカ豚コレラ発生及び肉製品等の持ち込み禁止の広報
★ 入国者の検査強化及び出入国者への注意喚起
動物検疫広報キャンペーンにおける情報提供及び注意喚起
中国から旅客便、国際クルーズ船等が到着する空港、海港
で広報キャンペーンを実施(全国28ヶ所)
外国人技能実習生への周知
中国便を取り扱う航空会社への協力要請
★ 水際対応実施状況の点検
(1) 靴底消毒の設置及び実施状況の点検を徹底
(2) 中国からのフェリー等が寄港する海港の船舶会社等に畜産関係車両搭載の有無の情報収取及び車両の消毒実施を周知。
(3) 指定港の厨芥処理事業者(全国100以上業者)に対して情報提供及び適切な処理を指示。
(4) 指定外港については、指定検疫物を含む可能性のあるギャベージを取り下ろしできない旨を再周知。
★ 中国からの豚由来畜産物の検査強化
(1) 貨物で輸入される中国からの加熱処理豚肉等の、現物検査の検査率を引き上げる。
中国からの航空便等の旅客が携行する、非加熱豚由由来畜産物のアフリカ豚コレラのPCR検査(モニタリング検査)の検査強
注意喚起をする掲示板
7.探知犬の活動 |
探知犬とは・・・手荷物の中から動物検疫の検査を必要とする肉製品や農産物を嗅ぎ分けて発見する訓練を受けた犬。
海外のいくつかの国で既に導入されており日本では平成17年12月に成田空港で初めて導入。その後主要空港に導入されている。
ビーグル犬
現在成田空港に6頭(ビーグル犬)配置されている。
★ 探知対象物・・・肉類・ハム・ソーセージ・餃子等の肉製品・果物(動植探知犬の場合)
★ 探知犬業務
① 対象物を発見すると、座り込んでハンドラーに知らせる
② ハンドラーからの知らせを受けた家畜防疫員(動物検疫所職員)が手荷物検査を実施。
★ 探知犬による摘発実績
平成29年(速報値) |
件数 (件) |
数量 (㎏) |
北海道出張所 |
1,556 |
589 |
川崎出張所(国際郵便局) |
3,916 |
4,169 |
成田支所 |
13,906 |
23,840 |
羽田空港支所 |
6,000 |
6,541 |
中部空港支所 |
1,839 |
3,133 |
関西空港支所 |
14,704 |
14,911 |
門司支所(福岡空港) |
1,615 |
2,104 |
沖縄支所 |
432 |
105 |
計 |
43,968 |
55,392 |
8.携帯品として持ち込まれる畜産に対する検疫対応の強化 |
★ 外国人技能研修生・留学生の受け入れ団体に対して事前に対応型の周知活動の強化。
★ 携帯品として持ち込まれる鶏肉等から高病原性鳥インフルエンザのウイルスが分離。
現場の視察を終え、会議室に戻り質疑応答。
○ 海外からの観光客も増え、地方空港利用者も増えており心配。
○ 全部チェックすることは難しい。人々の認識を変えることが必要。
○ 留学生・研修生(畜産及びそれ以外の分野)に情報を流し注意喚起。
○ 学校の事業で、子ども達に動物・植物検疫について話をし、その重要性を知ってもらう事が大切。
今回動物防疫の現場を視察し、少ない人員の中で我々畜産農家のために尽力されている状況をしっかりと確認をすることが出来ました。空港では,手荷物として持ち込まれる、肉類、ハム・ソーセージなどの肉製品の持ち込みとギャベージなど疾病侵入の危険性が多くあることを知る良い機会となりました。生産者ができる農場防疫体制の強化が強く望まれます。
参加したナイスポーク役員と、現場での詳細対応を説明頂いた検疫所の皆さんと