26年ぶりに国内で発生した豚熱・・・混乱と思い(岐阜県) 飼養衛生管理徹底等による養豚産業基盤強化事業

令和元年(2019年)に26年ぶりに豚熱(CSF)が国内で発生。これは、その初発の岐阜の養豚生産者の声です。「豚熱により、岐阜県は壊滅的な被害を受けた。我々はこのような経験を後継者に伝えています。そしてこの教訓を皆に伝えてほしい。今後も、豚熱対策を続けていくために役立ててほしい。


初発県の混乱と教訓

◎ウイルスは他国から侵入したとされているが、その侵入を水際で防げなかったことについては責められず、発生した農家が責められるのはおかしいと感じた。初発でもあり、発生すれば何もかも悪者扱いになる。野生のイノシシへの感染が分かり岐阜県では拡散防止の防護柵の設置(144㎞)や農場での対策もしていたのに、豚熱が発生するたびに「犯罪者」扱いになった。発生農場は被害者でもある。豚熱が発生し、精神的、肉体的にと心身に影響が出た。

◎なぜここまで広がったか。その理由は野生イノシシに感染したからである。野生イノシシで見っかってから農場での発生が早かった。その中防疫対策をしていたが、それでも農場で感染してしまった。農場の発生状況は豚舎の中央であるなど、必ずしも豚舎の出入口からではないと言える。

◎国も事前のプランが足りていない。「この状況になったら、こうなる」といった検討が必要。

当時、国から「クリアリング」案を出してきた。クリアリングは農家の豚を殺処分する計画だが、野生イノシシに広がっているのに、農家だけ殺処分しても防げない、対応に疑問を感じた。

◎野生イノシシからの感染例がない等、これまでと違う状況と周囲に感染源がある中での防疫対策は混乱と不安が生じた。恐怖を感じながら防疫対策を行ってきたが、野生動物の状況がわからないだけに非常に苦労した。野生イノシシに広がった以上、ワクチン接種が必要と思ってほしい。野生イノシシの脅威をもっと理解してほしかった。守るにはワクチンは必要だが、当初は他人事で理解してくれなかった。農家側としては、野生イノシシから感染する認識が薄かったと思う。

◎注意していく点では、野生イノシシの陽性濃度が高くなっているところは、さらに気お付けてほしい。野生イノシシは森がなくとも、街中でも確認されているので「近くにイノシシがいないから安全」ではないと認識してもらいたい。

●    飼養衛生管理基準への対応が出来ていない、地域住民からの了解が得られないなど、経営再開ができていない農場もある。

●    豚熱が発生したことでの精神的被害により、再開後に辞める従業員もいた。つらいのは社員も同じ。

●    浄化槽も消毒対象となり、消毒液(パコマ等)を大量に投入したことと運転を止めたことで、汚泥を浄化する微生物がいなくなり、通常運転するまで対応に苦慮した。

●    堆肥も「豚熱堆肥」と言われ使用を断られ、堆肥の処分に苦労した。

●    工事関係者の出入りもウイルスを持ち込む危険性があるため、野生イノシシの感染が近くで確認される前に、ハード面の強化はしたほうが良い。


経営再開までに行った対応(生産者・県・畜産団体・専門家)

●    県が「岐阜県CSF対策・養豚業再生支援センター」を設立し、農家への対応を支援。

●    県独自の飼養衛生管理のための施設整備に係る推奨基準や施設事例集を作成。

●    農家と県・家保等で意見を出し合い、それぞれの不足部分を補うなど対応した。

(豚と野生イノシシの検査施設の分離化、飼養衛生管理マニュアル作成指導など)

●    経営再開のため日本養豚開業獣医師協会(JASV)による点検・指導に係る支援。

●    国や地域の支援を把握し、少しでも助成を活用しながら対応した。

●    飼養衛生管理基準は「できない」ではなく、できることを考え基準に近づけていく、ハードやソフト、時間とお金がかかるがやる必要がある。

また、なぜその対策が必要か、従業員の防疫対策について理解を深めることも重要。そうすることで、エリアによって服や長靴の色を変えるなどの対策を講じた場合にも、従業員同士が互いに監視するような環境ができ、常に高い防疫意識を持った作業をすることができる。


伝えたいこと、今後対応してほしいこと

●    野生イノシシ(動物)の脅威をもち、常に広がっていると認識すること。

●    豚熱ウイルス濃度が高くなった場合は、より一層の防疫強化を講じること。

●    飼養衛生管理基準はできないではなく、やらなくてはならない。

(ベストができないのであれば、まずベターをしていかなければならない

●    防疫にベスト(完全)は無く、常にベターを選択し改善を続ける必要がある。

●    防疫対策として農場の動線は「一方通行」にし内と外が交わらない対策を講じること。

●    防護柵など農場周辺の対策は、感染動物がいなうちに講じること。

●    疾病の感染源は「人」「物・車両」「小動物」により侵入することの理解をすること。

●    豚熱用ワクチンがあるから安心ではなく、アフリカ豚熱から守る取り組みとして対応すること。

●    防護柵だけの事業では辛い。やるべきことは豚舎内もあり、コストがかかる。野生イノシシ対策の予算を回してほしい。

●    豚熱対策で大事なのは、いかに外部と接しないようにするか。内と外を分け、導線は一方通行、交わらないようにすることが大事である。

◎野生イノシシが周りにいない地域でも、人、モノ、小動物などウイルスは媒介する。

豚熱ウイルス状況をモニタリングして、敵を知ることが大事。モニタリング結果を見て冷静に対策をとるべきである。

★ワクチン接種を認めないのは「ワクチン豚」「汚染豚」となるからと言われた。

★当時はワクチン接種を行なったら殺処分と言われたが家伝法に記載がなく疑問を感じた。

★当時ワクチン接種の豚は、冷凍保存して流通をしないとも言われ、何の対策なのか理解ができなかった。今では接種しても肉用に流通できている。

★ワクチン接種が認められない理由ばかり出され、どこまで行ったらワクチン接種を認めてもらえるのか、基準が曖昧で、国としての方向性を出してほしかった。

★ワクチン接種県は現在30県となっている。これが野生の怖さである。

◎ 岐阜県では豚の検査とイノシシの検査が同一施設であつた。

出荷豚の全頭検査が必要のなか、同じ施設の人が来ており、本当に危険だと思った。

疾病の危険、豚へのストレス、そして人へのストレスを感じた。

各県は野生イノシシの検査をどうしているのか。人や車両で媒介する以上、交差汚染の可能性は排除すべき


豚熱発生で失ったもの。(豚・人からの信頼・お金)

●    育ててきた豚を全て失った。(全頭殺処分)

●    再開まで時間がかかることで、消費者への信用信頼を失った。

●    殺処分及び埋却作業が住民に不安を与えたことで、地域住民からの信頼を失った。

豚熱発生のため埋却したが、現場を地域住民に見られ、今後の規模拡大も反対された。また埋却したことで「土地の値段が下がる」と言われた。埋却しない方法を検討してもらいたい。住民説明会を行なった。

●    収入を失った。

しかし、飼料代等、衛生対策費、従業員の給料等の対応はしなくてはならない。

●    肥育用子豚の移動場所を失った。

●    発生県であることで、堆肥の受け入れ先を失った(豚熱堆肥と言われた)


経営再会に向けた苦闘

●    互助基金が入るまで審査等に時間がかかり無収入状態で経営再開への準備を行なった。

互助金は9カ月まで。再開には1年以上かかったので互助基金期間を改善してほしい。

●    飼養衛生管理基準に対応するたあめに、ハード面及びソフト面で対応が必要となる。

●    また、対応するには多額の費用が必要で、農場状況や規模によって価格は異なる。

(例:豚舎の立て直し無しで、改修費5千万円。≪母豚150頭未満))

●    経営を再開するために地域住民への説明会等が必要となった。

その他

    飼養衛生管理基準が他畜種より規制の違いがあり、公平な対策ができないか。

●    イノシシは獣害であるため経口ワクチンの散布よりも駆除への対策を強化できないか。

●    ネズミによる経済損失は大きい(漏電、疾病など)ネズミ対策をするべきではないか。

●    ワクチン摂取で空白期間を開けないように対策をしてほしいが、家保に限界があることを理解し、新たな対策をするべきではないか。

●    ワクチン接種による外部の人間の出入りを極力減らす対応を検討すべきではないか。

●    経口ワクチンを止めてほしい。効果が見られない。イノシシは獣害であるので、駆除の対策を強化してほしい。経口ワクチンの効果なのか、イノシシは増えている。

●    豚熱は、感染力・致死率の高い疾病であり、もっと効果的な対応をしてほしい。

●    発生当時は、県の家保の対応に疑問を感じたこともあった。また、農家にも対策の不足があった。その対応として、農家・県・家保で意見を出し合いながら、お互いに改善するような関係づくりをした。農家と県で意見を出し合い連携を強化することは必要。

日本中央競馬会 特別振興資金助成事業  令和3年8月発行