自由民主党養豚農業振興議連総会開催 議連会長に森山 裕衆議院議員就任される
2022 .4 .14
午前8時、自由民主党養豚農業振興議員連盟総会が衆議院第1議員会館大会議室で開催され、森山 裕衆議院議員(鹿児島県)が宮腰光寛前会長(富山県)の後任として会長に選出され、副会長に坂本哲志衆議院議員(熊本県)、幹事長に葉梨康弘衆議院議員(茨城県)、事務局長に井野俊郎衆議院議員(群馬県)事務局次長に神田潤一衆議院議員(青森県)がそれぞれ就任された。
大島理森元会長、宮腰光寛前会長は最高顧問、他閣僚経験者17名が顧問、他は幹事としての役職に就いた。令和4年4月12日現在衆参77名が所属する組織として、養豚生産者の期待も大きい。今回の総会開催の大きな目的の人事が決定され、森山新会長から次のように挨拶された。
新会長に就任された森 裕衆議院議員
出席者に謝辞を述べられ、「会長就任について大変な時期に会長を引き受けた。平成27年に農林水産大臣に就任直後にアトランタでTPPの大筋合意が行われ全国の農家にTPPの目的、国内への影響を最小限にという事等について全国で説明を行い、TPP関連対策に尽力した。その対策ではマルキン制度の中で牛と豚の違いの是正を行い法律化した。その間、前大島最高顧問と宮腰前会長のご尽力により養豚農業振興法が成立した。養豚振興法の精神を基に努力する。現実、豚肉は半分の自給率、飼料は大部分輸入に依存、ウクライナ情勢により原料、運賃は高騰、為替は円安。様々な影響を受けている養豚農家の心情を理解する。養豚業を安心して継続できる対策、長期中期的な養豚の方向性を示す必要がある。また、カーボンニュートラルの世界における養豚業はどうあるべきか、これも又、大きな課題である。環境問題と養豚農業の課題について触れカーボンニュートラルにも貢献できる養豚業を目指していくことも重要である。議連としては業界のご意見聞きながら農水省と一緒になって養豚農家が安心できる政策をしっかり作り、予算を獲得して前進をさせたい」と、養豚農家を激励した。最後に「日本の量販店のプライベートブランドについては生産原価が高騰しているにも関わらず小売りは値上げをしないという発表は日本の農畜産物の価格形成についても極めて大事な課題である。価格は生産原価に農家の利益を転嫁し決定されるべきであり、これについてどのように対応していくか」等、現況の課題を述べられ抱負を語られた。
議連幹事長:葉梨衆議院議員
JPPAから議連に対する要請 |
厳しい養豚情勢から養豚農業振興議連総会に際し、要請書を提出した。
会場には、JPPA役員、県組織会員、事務局27名が対面及びリモートで参加した。
農林水産省から:小川 良介消費・安全局長、熊谷 法夫大臣官房審議官兼消費・安全局、石川 清康消費・安全動物衛生課長、同郷 達也畜水産安全管理課長、森 健畜産局長、伏見 啓二大臣官房審議官兼畜産局、関村 静雄畜産局企画課長、同廣岡 亮介畜産経営安定対策室長、犬飼 史郎畜産振興課長、同葛谷 好弘畜産技術室長、冨澤 宗高飼料課長、髙山 成年食肉鶏卵課長、等関連部署から各担当者が出席された。
要請は、JPPA香川会長から要請書を説明し対応をお願いした。
自由民主党養豚農業振興議員連盟の先生方の日頃の尽力と総会開催に感謝を述べた。新型コロナやロシアのウクライナ侵攻と世界経済の混乱が起きており我々生産現場にも大きな影響が及んでいる。国内では豚熱の感染イノシシの広がりがみられ養豚農家は飼養衛生管理基準の遵守に一層の力を入れているが、現場ではせっかくのワクチン最大限利用できているのか疑問視されるなど、現況を説明した後4項目について要請内容を説明。1、豚熱ワクチンに関して接種初年目は年2回の抗体検査が義務付けされているがが、昨今の接種農家での発生は接種2年目に多くみられてる。2年目というのは抗体価が不安定な時期と重り農場ごとにワクチン接種が適期に行われていないと感じている。現在のサンプル調査ではなく抗体検査を確実に実施し適時に接種できれば免疫の穴も小さくできるはず。農家ごとに接種適期を抗体検査により判断できる柔軟な体制に移行していただきたい。また小規模農家はワクチン接種回数が月に1~2回と少なく、その分だけ免疫の穴も大きくなってしまう。大規模農場は毎週打っているような状況だが、小規模農場にそのような不利益が生まれないような対策を取り組んで頂きたい。2、先月(3月)山口県で感染イノシシが確認され、九州各県にワクチン接種プログラムの準備が要請された。宮崎では、口蹄疫で家畜防疫員不足を指摘されたため、獣医師の増員を図っている状況だが、なかなか増員が出来ない。ワクチンを接種するには絶対的に不足すると思われる。先ほど話した抗体検査の充実もおぼつかないのではと危惧している状況。国も何らかの対策を講じて欲しい。3、飼料価格の高騰について従来の配合飼料価格安定基金の積み増しだけではなく後々に生産者負担に跳ね返ってこない形、例えば燃料価格上昇への補助金のような特別な対策の実施をお願いしたい。また配合飼料価格安定基金に加入せず自家配合の生産者、つまり国策の飼料米を多く使っている農家は自家配合をやっている。このような農家にとって今飼料原料高騰の影響は大きい。そのような生産者たちにも何らかの配慮をお願いしたい。4、SDGsやカーボンニュートラルと我々生産現場でも「みどりの食料システム戦略」に取り組まなければならない。時代に即した新技術の導入は避けて通れない状況だと感じているが、中小経営では投資が大きな負担になってしまう。要請書に記載しているような支援策の検討をお願いしたい。今後とも養豚振興に先生方の更なるご支援のお願いを申し述べ締めくくった。
要請書を朗読するJPPA香川会長
自民党養豚農業振興議員連盟
会長 森山 裕 会長
自民党養豚農業振興議員連盟総会・要請
日頃より、自由民主党養豚農業振興議員連盟の先生方には、わが国の養豚農業振興にご尽力を賜り、心より感謝を申し上げます。 さて、わが国の養豚農業を取り巻く状況は、初発から3年半を過ぎた豚熱が、未だ終息の目途が立たず、また、中国でのASF発生や世界的な新型コロナウイルスまん延による流通コストの上昇等を背景とした穀物価格の高騰に加えて、今般のウクライナ・ロシア紛争による世界経済の混乱と原油、穀物を始めとした資材価格の急騰など、全く先の見えない厳しい試練に直面しています。 このような中、私ども養豚生産者は、飼養衛生管理の向上、コスト低減と豚肉品質の向上に努め、安全安心な国産豚肉の供給に精一杯努力をしているところです。しかしながら、このような厳しい状況の中では、先生方の力強いご支援、ご指導が何よりも心強い手助けとなることから、以下のようにご要請させていただきますので、特段のご配慮のほどお願い申し上げます。 記 1. 豚熱ワクチンについて、適期に接種することにより免疫の穴を小さくできることから、農家ごとの抗体検査を徹底し必要な追加接種を促進するとともに、ワクチン接種効果の向上策についても柔軟に検討してください。
2. 九州地区について、ワクチン接種プログラムの作成準備に入ったところですが、特に大産地である南九州(宮崎県・鹿児島県・熊本県)にあっては、現行の指針に基づき接種する獣医師(家畜防疫員及び知事認定獣医師)の充分な確保が可能なのか検証をお願いします。
3. 食料安全保障の観点から、価格高騰する飼料等の農業資材について、実質的に生産者負担が増加しない形での対策を緊急に実施してください。
4. SDGsが世界的な課題となり、養豚農家にとっても「みどりの食料システム戦略」に沿った畜産環境問題の解決は、今後の経営存続のため不可欠な取り組みとなっていることから、最新の技術を取り入れた堆肥・汚水処理施設の整備を図るための支援策(例えば、補助付きリース事業等)の創設をお願いします。 |
要請に対する答弁等準備の農水省幹部職員
JPPAの要請に対する農水省の回答
小川局長: 1点目、豚熱ワクチンについて、長期間飼育する母豚については初回を打ってその半年後に2回目、更にその後は年に1回ずつ補強接種をしていく。その間生まれた肥育豚について基本的に半年で出荷になり、先ず母体から引き継いだ移行抗体がなくなる時期に1回目の接種を実施するということが基本。そのうえで都道府県が農場ごとに免疫の付与状況の確認検査を行い免疫の付与の割合が8割にいっていない場合には農水省に相談、2回目のワクチン接種といった状況である。引き続き都道府県と連携を図りながら対応する。今後ともワクチンの適切な接種方法については科学的な知見を収集しながら専門家の意見を踏まえ検討する。2点目、九州地区のワクチン接種プログラムの作成準備の依頼について、山口県において3月13日に豚熱陽性の野生イノシシが確認された為、九州地区につても接種推奨地域として決定していないが、その準備をお願いした。先ず準備の状況から明らかになった九州の状況をまず把握し、表れた課題について対応を検討していきた。引き続き各県と意見交換しながら進めていく。
森局長:3点目、要請の飼料価格高騰への対応という点について、現在配合飼料の価格安定制度について引き続き安定的な運用が可能に、ということで今回の総合緊急対策の中で必要な対応を現在検討しているという状況。また中長期的には豚マルキンでも飼料費の高騰、生産コストの変動への反映にもなっているので、こうした経営安定対策の運用というのも図っていくという事だと思っている。
さらに長期的には、餌を含め生産コストは縮減をしていくといった様々な努力、さらに輸入飼料に頼らいような自給飼料の生産を拡大していく対策など検討していきたいと考えている。もう1点、自家配合の方々へのご対応について要請もいただいた。現在の配合飼料価格安定制度については生産者と配合飼料メーカーが基金を積み立て、それに対して更に国が後押しをする仕組みになっている。様々な穀物、エコフィードも含め、通常飼料メーカーを介さない流通について、飼料メーカーにも負担をお願いしている現在の仕組みの中での手当は大変難しい課題がある。ただ、一方で飼料用米への代替、とうもろこしに替って飼料用米を使用することにあたりどのように円滑化していくか等農水省としても出来ることはありうると思っているので、様々な経営対策を含め検討する。4点目、畜産環境対策につきましては様々な堆肥の高品質化、ペレット化、施設整備やクラスターの事業でも施設整備の支援をしているので利用を図っていただきたいが、個々の課題がある点は丁寧にお話を聞きながらこの施策の推進を図っていきたい。
出席議員からの質問・農水省の回答を踏まえ
≪ 葉梨幹事長からの発言 ≫
今日の会合は役員人事のみならず、豚熱の関係、餌が非常に高騰しているという事に対してどう対応するか、価格転嫁への意見も出たが、今回の緊急経済対策では基本的には異常補填準備金を積み増す既存の対応だが既存の対応、既存制度の対応で十分で足りるのか。また、肥料についてはその制度がない。そうなれば参議院議員選挙後の補正予算で何らかの対応を取るのかどうか、そういったことも視野に検討する必要がある。それから豚熱ワクチンについて、牛豚等疾病小委員会は10人ほどの委員で構成され、うち4人くらいが豚の専門家である。JPPAで、ワクチン接種について融通の効く方法について要望があった。この問題についてワクチンの現在の供給量、獣医師の問題、抗体価の問題などを検討しなければならず、まずワーキングチームを作ろうという案もあったが、少数なうえ未だ任期途中であり迫田先生はじめとしてJPPAからの推薦のあった二名の先生を豚関係会合では必ずオブザーバーで参加するという対応でJPPAの意見を十分反映できるようする。また専門家の話になるが、豚熱ワクチンがいき渡った場合獣医師は仕事がなくなるという懸念も聞こえている。この点についても支援策を取っていかなければいけない。時期的には今日政審総務で通る経済対策では、基本的に予備費を使うしかなく何らかの形で今の餌の問題、価格転嫁の問題、ワクチンの問題等を施策として盛り込むのは次期補正予算なる。本日は要請を受けるのみで、今後時期をみて議連としての決議を作成し何らかの要請を議連として行っていくということも必要になるのではないかと考えている。次回総会をどの時期に開くかということについては選挙の直後になるのか、ウクライナの情勢などを見て調整し、本日の先生方のご意見も踏まえ議連としての意思統一を取っていくような運営も心掛けたいと思っていると締めくくった。
≪ 森山会長からの挨拶 ≫
真剣な議論があったことについて感謝が述べられ、経口ワクチンなども思い切った予算を使うことによって拡大を食い止めることにつながるので農水省は財務省との予算交渉に尽力して欲しい。、九州に豚熱が入らない為にも山口の野生イノシシ豚熱感染問題はもう一歩進めて分析するよう。獣医師不足は産業動物を扱う獣医師不足である。産業動物にどう獣医師の先生方が関心を持ってもらえるかだ。この状態が続けば、免許制度を変えないといけないのではないか危惧している。幹事長の方から話があった通り今後のことについはしっかり対応する必要があるが、飼料の補填金のところは今回の補正(予算)でいくらか対応しておく必要がある。しっかり取り組みたいので、また色々なご意見を聞かせて欲しいと締めくくった。
森山 裕新会長へ要請書を手渡す香川JPPA会長 左:坂本哲志副会長(熊本県)、右:葉梨康弘幹事長(茨城県)