令和4年度千葉県養豚大会開催

千葉県養豚大会は令和5年2月2日(木)、山武市埴谷所在のさんぶの森文化ホールにおいて3年ぶりに開催され、ナイスポークはこれに共催した。例年午前中開催される県試験研究成果発表会は、匝瑳地域の鳥インフルの発生続発による、その対応・処理に追われている状況から急遽開催が中止され、養豚大会単独の開催となった。当初、飼料価格の高止まりから、生産性をより高める事の必要性から、自らの経営の立ち位置を知り、その改善から経営基盤の強化を図ることも必要と考え、ベンチマークの取り組みをとも考えたが、疾病を食い止め、衛生環境を改善することも経営基盤の強化にも繋がることから、今回の講演は、疾病問題と先の活動報告会で決議されたレンダリングの活用による焼却処分についての2つの演題内容で行った。

講演―1

『 豚熱から学ぶアフリカ豚熱の対応 』

(有)あかばね動物クリニック 獣医師  伊藤 貢 先生

講演冒頭では、私見として「なぜ、いまだに豚熱で困っているか」としてワクチン接種前と接種後を次のように解説された。

ワクチン接種 前

ワクチン接種 後

❉ 豚コレラのイメージが大きい

❉ イノシシの知識が無かった

❉ 効果的な消毒方法がされていなかった

❉ バイオセキュリティが甘かった

❉ 混乱

❉ 検査方法の混乱

❉ 移行抗体の問題

❉ ワクチン接種時期の問題

❉ バイオセキュリティの甘さ

❉ イノシシがコントロール出来ていない

また、豚熱と豚コレラは違うとして、

❉豚熱は豚コレラと同じウイルスですが、豚コレラの時は強毒型、豚熱は中等度と言われております。症状が弱いことが特徴です。しかし、伝播は同じか、むしろ知らない間に広がると言う意味では豚コレラよりも対応が難しい病気です。

  • 分かっていないことが多い

❉豚コレラの時代の知識がベースになっていますが、異なる点が多く、分からない事が多いことから、出来るだけ新しい情報を入手することが必要です。かなり混乱しています。

  • 環境中にウイルスがばら撒かれた

❉豚コレラの時代は、環境中にウイルスが存在しなかったので、対応が単純でした。 しかし、豚熱は環境中にウイルスが拡散しているため、防疫が複雑になっています。養鶏業界のように空からウイルス爆弾が落ちてくる感じで防疫の対処をしないと侵入は食い止められません。

  • ASFはCSFのノウハウで対処

❉恐らく日本にも侵入するであろうアフリカ豚熱対策は、豚熱対策の防疫が充実していれば、防御できます。

  • ASFのお手本があり防御している

❉ASFは、海外(韓国・ドイツ・イタリア)を見ていると、ウイルスをコントロール出来ており、既にお手本がありますので、恐れる事はありません。今は豚熱の防疫の充実を図りましょう。また、CSFはワクチンだけでは防げない。諸外国で発生しているASFの清浄化は困難と結論づけた。

ワ口ネーションの考え方

❉ワクチン接種後、2日間免疫空白期間があり万能ではない

❉PRRSの発症個体は、免疫獲得を低下させる。

❉ポイントは母豚の免疫の平準化

日本の農場セキュリティは、不十分である

ASFが発生しているドイツ、イタリア、韓国では、日本のCSFに比べ、発生が著しく少ないことに注目。ASFウイルスとCSFウイルスは伝播の速度は異なる可能性があるが、ワクチンの無いASFでは、地域と農場の二本立てでASFウイルスの侵入を阻止している。

また、イノシシのコントロールも出来ていない。農場・地域・市民・行政の対応が遅れている。

≪ウイルスの侵入要因≫

①山からの雨水土砂侵入②ネコの畜舎内への侵入③豚移動柵が金網で移動時にウイルス感染する可能性がる④野生動物の衛生管理区域内への侵入⑤畜舎内の人の出入によるウイルスの持ち込みの可能性 ⑥ 消毒が効果的に行われていなかった

ー講演のまとめとしてー

①ワクチンを過信しない ②ウイルスを豚の口まで届かないよう努力をする③効果のある消毒方法を実施  ④地域で、イノシシが入ってこない取り組みを行う⑤アフリカ豚熱を念頭に置いた対応をする⑥地域を分けて、豚、エサなどの物流させる

2つの講演として、昨年12月7日に開催された令和4年活動報告会において「経営存続のため、法的殺処分された家畜は、レンダリング装置の活用により埋却から焼却処理への方向転換を強く求め活動してまいります」決議された内容により次の演題で講演がされた。

講演―2

 法的殺処分される家畜の処理方法の改善を求める取組と運動 』

イデアス・スワインクリニック  獣医師  早川 結子 先生

殺処分された家畜は、家伝法では焼却又は埋却と定められているが、通例として埋却処理されている。そのための生産者は、埋却できる土地の確保が飼養衛生監理基準で義務として定められている。しかし、土地を確保しても、いざその場になって必ず埋却できるとは限らない。地下水、地域住民の反対など想定される。そこで焼却処理するために必要なレンダリングについて解説された。

レンダリングとは、家畜の死体を細かく粉砕し、加熱して減菌する方法であり、生じた生成物は密閉容器等で運び出し、焼却炉において焼却する。家畜伝染病が発生した場合には全頭殺処分して埋却又は焼却しなければならない。焼却の前段としてレンダリング処理が必要である。移動式レンダリング装置は国内には、4カ所(福岡・名古屋・横浜・北海道)設置されている。これまで85例(疫学関連含まず)144農場(疫学関連含む)で豚熱が発生、内レンダリングと焼却を行ったのは、大阪と神奈川の2件だけである。

レンダリングと埋却処理の問題点

【 レンダリング処理の問題点・・・運用・期間・コスト 】

❉ 埋却より時間がかかる

❉ 処理中は騒音・悪臭の問題がある

❉ 殺処分以外に膨大な人員が必要

❉ 密閉容器、運搬車両等の膨大な資機材が必要

❉ 設置場所・生成物置場・焼却施設等・レンダリングに関係する    場所・施設の確保が必要

❉ セミトレーラーが入る広さのある道路が必要

❉ コストが膨大(埋却の数倍)

【 埋却の問題点・・・病気を広げてしまう危険性・地域住民との関係悪化・生産者の問題 住民にとっての問題・再開の妨げ・長期的課題 

❉ 用地確保が困難(規制緩和されたが実効性が低い)

❉ 埋却した後(臭気などの苦情・風評)

❉ 埋却した土地は、3年は掘り起こせない

❉ 再開には、新たに埋却地の確保が必要

県内の今後の働きかけの流れ

❉ 生産者の意識共有・・・県内生産の共通認識作り

  • 各市町の生産者へ説明
  • 嘆願署名集め

❉ 地元での意識共有・・・各市町で

  • 市町への働きかけ
  • 地元議員への働きかけ
  • レンダリングの希望調査
  • レンダリング運用方法の話し合い

❉ 地元市民からの声が重要

  • 焼却場を持つ市に対して・・・協力のお願い

❉ 行政と生産者が共同ワーキンググループ立上げ・・・県行政に対して

  • 嘆願書提出
  • 県行政との話し合い