一般社団法人日本養豚協会(JPPA) 2023年度通常総会盛大に開催

令和5年6月21日(水)中央養豚生産者組織である(一社)日本養豚協会(JPPA)通常総会は、生産者・関係者約260名が参加され東京港区所在の東京プリンスホテルにおいて開催されました。開催に際し、豚熱によりやむなく刹処分された36万頭の家畜に対し黙祷を捧げました。

この総会に、ナイスポークとして生産者、関係者13名が出席。 塩澤英一会長代行から開会の言葉、香川 雅彦会長から挨拶。

香川会長は養豚をめぐる情勢について「過去10年の間に全国の母豚数が約10万頭減少、戸数は年平均約6%という高いベースで減少してきており、5年以内に廃業を考えている生産者も増えている状況を踏まえ2023年度の基本方針として次の4項目を示した。

(1)会費算定方式の「肥育豚出荷頭数」への統一と会運営の安定化

❉現状の繫殖母豚頭数と肥育豚出荷頭数の選択制から肥育豚出荷頭数への一本化を推進

❉委員会を設置し効率的、公正な会費徴収、並びに適切な業務実施のための内容の見直し

(2)養豚経営安定対策の強化

❉豚マルキン事業の課題検討の継続により国への改善を求める

❉配合飼料価格安定制度については、異常基金が多額の借入により実質的に破綻している状況を踏まえ国への見直しを求めていく (3)豚熱及びASFの侵入防止

❉豚熱への対応として飼養衛生基準の遵守。ワクチンの効率的な接種の推進し飼養豚での発生の根絶に努める。

❉ASFの侵入防止のための水際防疫の強化を求め、地域・農場防疫の徹底に努める

(4)会員拡大努力と活動の活発化

❉都道府県事務局との定期的な会議開催し、連携を図る

❉養豚問題懇談会を設置し幅広く意見を求めていく

ご来賓として出席された方々を代表して、江藤 藤拓衆議院議員(自由民主党総合農林政策調査会長)、坂本哲志衆議員議員(自由民主党養豚農業振興議員連盟副会長)、農林水産省畜産局 渡辺 洋一局長から祝辞をいただきました。

最初に挨拶に立った江藤衆議院議員は「豚熱で犠牲となった豚への黙祷から参加して思うところがある。自身が農水大臣に就任したときに豚熱ワクチンの使用を決断したこと、地元宮崎県での口蹄疫による殺処分の辛さ、農場再開へのハードルの高さ」また現下の飼料をはじめとするコスト高の現状にも触れ、政府・与党として支援策を出していてもなお現場は大変だろうと察してうえで「多くの生産者が養豚を続けることに迷っている時期かもしれない。

しかし、最後まで頑張った人が報われると思う」と生産者への頑張りを期待された。

坂本 哲志衆議員議員

渡邊洋一農林省畜産局長

議案の審議

 

議事に入るに際し、議長に山形県会員で(株)山形ピッグファーム・阿部 秀顕氏を選出した。事務局から議案の説明があり全議案は問題なく承認された。

第1号議案:2022年度事業報告及び収支決算報告に関する件

第2号議案:2023年度事業計画及び収支予算に関する件

第3号議案:2023年度会費の徴収に関する件

全国の会員数の推移

会員数 母豚概算
2023年3月末 1,313 424,701
2022年3月末 1,394 432,514
2021年3月末 1,443 423,514

会員数の漸減傾向が止まらないなか、欧米や韓国のチェックオフに比べ会費の拠出単価が低いことから十分な活動費を徴収することが難しくなってきている。打開策として会費算定方式の「肥育豚出荷頭数」への統一と会運営の安定化等の基本方針を次のように打ち出し、基本方針として次の事業推進を掲げた

(1)会費算定方式「肥育豚出荷頭数」への統一と会運営の安定化

2023年度の事業計画では、厳しい養豚情勢の改善見通しもすぐには見込まないこともあり、繫殖雌豚から「肥育豚出荷頭数」による会費徴収への統一による会の安定運営を打ち出した。

疾病による生産性が低下している地域もあり、果たして生産者会員の賛同を得られるかが問題と考えられる。

(2)養豚経営安定対策の強化

(3)豚熱及びASFの侵入防止

(4)会員拡大努力と活動の活発化

その他、定款に定める基本事項に加え、部会活動、その他継続事業として、農業大学校の開催、豚肉トレサビリティー、MA米の購入販売、登記・登録による育種改良、補助・委託事業の実施を計画に盛り込んでいる。

令和4年の各部会の活動が報告され、アニマルウエルフェア推進委員会から次の報告と解説がされた。

AW推進委員 石川 輝芳 委員長

日本におけるアニマルウエルフェアへの関心の高まりに対し、適切な飼養管理と国際獣疫事務局(OIE/WOAH)のコード(基準)に則った日本型アニマルウエルフェア(農水省の新しい指針)を普及する目的で、2022年に立ち上げた委員会。

≪ アニマルウエルフェアの5つの自由 ≫

 (1)飢え、渇き及び栄養不良からの自由

給餌:豚の発育状況にあわせた質と量のバランスが適切な栄養をあたえること。また豚の健康を損なうような内容になっていないか、必要に応じて検査し、汚染や劣化を防ぐこと。

給水:豚が飲みたいときに十分に飲めるようにすること。

栄養不足:疾病による食帯からの栄養不良等に気をつけること。

輸送時:距離や天候に応じて給餌・給水を行うこと。

 (2)恐怖及び苦悩からの自由

ハンドリング:家畜を手荒に扱わないこと。また豚を追う際には距離感を考慮し、豚に不安を抱かせることなく人がコントロールできるよう、バランスポイントを利用すること。

騒音防止:過度な騒音、また突発的な騒音がないよう維持・管理すること。

 (3)物理的、熱の不安からの自由

温度管理:防暑対策や寒冷対策を行い、豚にとって快適な温度となるよう管理すること。

有害物質の除去:畜舎等におけるアンモニア等の有害物質の過度な滞留は呼吸時の不快感や疾病の原因となるので、適切に換気を行い、その低減に努めること。

 (4)苦痛、傷害及び疾病からの自由

 去勢・断尾・切歯: 痛みを伴うおそれのある処置行う場合、必要に応じて獣医師の指導の下で麻酔や鎮痛剤を使用し、豚の苦痛を緩和するよう努めること。

ハンドリング: 豚を追う際は、追い板等豚にけがを負わせたり痛みを与えたりする可能性のない道具を用いること。

安楽死: 疾病や虚弱のため殺処分を農場内で行うときは、できる限り苦痛の少ない方法で行うこと。

 (5)通常の行動様式を発現する自由

 群 飼: 群飼する際には、喧嘩がないよう群の構成に気をつけること。また、密飼いはけがや、摂食・摂水・運動、休息等に悪影響を与える可能性があることに気を付けること。

畜舎・移動の環境:① 豚がけがをする原因がないこと、② 床面は滑りにくい材質を用い、水はけを良くし、衛生的な状態を保つこと、③ 家畜が休息するための十分なスペースが確保されること、④ 十分な光量が確保されること。

≪ アニマルウエルフェアとは ? 

豚にとって快適な飼養であり、給餌。給水、温度管理、ほとんどの部分は生産者が当たり前に実施している。アニマルウエルフェア=群飼ではない。アニマルウエルフェアというとストールの廃止を思う人が多いが、日本ではこれまでも新しい指針でも、現在のところストール飼養を禁止していない。フリーストールでの成績低下や、豚同士の闘争でけがをするなど、ほかのウエルフェアが保たれない部分もある。豚にとって何が幸せか? 本当のウエルフェアを訴えていくことも重要。

海外ではケージ禁止法制化の動きもある。最もアニマルウエルフェアの基準が厳しいヨーロッパやアメリカでは、各畜種でケージ(ストール)飼養禁止について法制化がすすめられている動きもある。このように、海外の状況のように、今後日本でもケージ飼養が規制される可能性もある。それを見越して対策をしていくことは重要。また、強勢や断尾、切歯など、痛みを伴う処置についても定められている。これをどうするか今後の課題。

アニマルウエルフェアは、世界的な潮流であり避けることは難しい状況です。ただ、本当に豚にとって快適な状況とは何か・・・一番知っているのは、私たち生産者です。

我々はアニマルウエルフェアに取り組んでいると、胸を張って言っていきましょう !

JPPAとして推進するチェックオフの法制化に向け次のような意見も聞かれることから、前向きな検討も必要ではないだろうか?

組織率について

農家戸数をサンプル調査に基づき統計処理して求めている「畜産統計」を分母にとって求めるのが妥当なのかという議論はある。特に近年、農場は存続していても、実際には経営権を持たない預託が急激に増加しているとも指摘されている。豚マルキン事業には「大企業」以外の多くの経営体が加入していると考えられているが、2022年度の加入数1900件とされており、これを分母にとればJPPAの戸数ベース組織率は69%まで上がることになる?

記念講演-1

 『 日本ハム株式会社・豚肉動向と今後の考察』

日本ハム(株)食肉事業本部長  取締役常務執行役員

                       前田 文男 氏

記念講演―2

『 中国スマート養豚の動き・ 構造変化と日本への示唆 』

    株式会社 農林中金総合研究所

         理事研究員 阮  蔚(RUAN Wei)氏

今回2つの記念講演が開催され、終了後に懇親会(情報交換会)が盛大に開催されました。

    懇 親 会

懇親会冒頭、「日本養豚激動の25年」が完成したことから、(一社)日本養豚協会志澤名誉顧問から記念誌出版に関する挨拶。

JPPA創立を挟む四半世紀の養豚生産者組織の活動を生産者、行政、団体関係者、国会議員など30人いじょうから寄稿された文章を基にまとめたもの。海外輸入豚肉よの競合や豚コレラ清浄化や口蹄疫など重要疾病との戦い等、この25年の間に日本の養豚業界は何度も岐路に立たされ、そのたびに生産者の団結をもって乗り越えてきました。世代が代わり、その時々の活動を風化させぬよう後世に伝えることの大切さが語られ、作成準備から一年がかりをかけた記念誌作成の想いが語られました。

記念誌の想いを語る志澤名誉顧問

名誉顧問の話に耳を傾ける参加者

養豚議連顧問 森英介衆議院議員

懇親会は情報交換の場として大いに盛り上がりをみせた。

参加した千葉県の生産者会員

自民党養豚議連 森山 裕 会長

養豚議連葉梨幹事長を囲んで

松本 尚衆議院議員を囲んで